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 深層崩壊に関する35年前の議論   下河 敏彦
 

 下の表は、1977年の月刊地理22巻5号に「地くずれと危険斜面の調べ方」という、羽田野誠一氏と深田地質研究所の大八木先生と編集者の対談集に掲載されていた表です。ここでいう”地くずれ”とは、表層崩壊や土石流を含めた斜面の地形変化、土砂移動現象の総括した用語として用いられています。()書きで(Landslide)とありますので、現在の定義に近いものと言えるでしょう。さて、上の表の右側の列をよく見ると”基”とき記号があります。これは基岩崩壊の頭文字をとったもので、今でいう深層崩壊と同義と思われます。対談のなかで、このようなやりとりがありました。

編集 :表をみるまでは、地くずれ災害がこんなに多く起きているとは思いませんでした
羽・大: 自然に対する人間の影響(切土、盛土、掘削、地表水・地下水流路の意図的及び無意識的 (山腹道路開設などのよる)森林伐採)がじわじわでてきて、被災対象も急増した。実際には数百年来大災害を受けていない地区が国内にたくさん残っている。そのなかには”免疫性” があるために崩れ難い地区のほか豪雨や地震などの誘因が与えられなかったために残されている地区もかなり多い。
編集 :近年、豪雨や地震の誘因が強まったということはないか
大::専門家に聞いてみたい問題ですが、特に著しい変化を考えねばならない積極的なデータは聞いていません。山の中の観測地点が増えたので、記録的雨量が測られる機会は多くなったでしょうが、、

 この議論を読んでいると35年も前からむかしから、今と同じ議論があったことが伺えます。奇しくもこの対談以降、1970年代末にアメダスの観測網が整備されることになります。

  
 
 羽田野誠一地形学論集刊行会(1998):羽田野誠一地形学論集 234Pより

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