ある人の特徴を表現する場合、”やさしい”,”大きい”など主観的な言い方をするのが普通です。しかし、顔の大きさ、体の凹凸度や髪の色など、部分〃の配置や大きさを数値として表現できる特徴も多く認められます。自然もその形や配置、色の配合と言った観点に着目すれば、複雑さを定量的に表現することができます。このための一般的かつ実用的な手法が、フラクタル解析です。
フラクタルとは、1975年にマンデルブローが作った造語で、部分と全体との関わりで扱うことのできる図形、構造、現象、分布を指す言葉です。言い換えれば、拡大・縮小によって観測のスケールを変えても同じように見える図形のことで、複雑なパターンを定量的に扱うことが可能となります。
フラクタル-景観の定量的評価と計画-



このような類似性をもたらした主要因として、地質構造の発達史的背景をあげることができます。
ネパールの屋根となるヒマラヤ山脈は、衝上断層を主体とするインド亜大陸の付加によって急激に隆起し、岩盤は断層によって著しく劣化しました。これによって、斜面崩壊や地すべりが多発する一方で、保水機能を持った棚田が山地の代表的な農業景観となりました。
日本列島の西南日本もほとんど同じようなメカニズムで山地が形成され、に崩壊、地すべりが発生してきました。また、棚田もよく見られます。
つまり、フラクタル次元が類似するもの必然的なことなのです。
吉川宏一・稲垣秀輝・大野博之・平田夏実(2003): オムニスケープジオロジー,応用地質44(1)
色彩のフラクタル解析については、通常のRGB画像を色相(H)・彩度(S)・明度(IorL)に変換して、フラクタル解析を行います。
このように、景観を構成する形と色彩を客観的に評価することが可能になります。
例えば、現在失われてる河川景観を復元したいとする場合、その周辺地域における自然状態の河川のフラクタル次元を求めることで、ある程度の自然度を持った景観を復元する客観的な指標ができるわけです。


下の写真は、ネパールと日本の四国地方の風景です。どちらがネパールでどちらが日本か、言われなければまず気がつかないのではないでしょうか。実際に景観を構成する形状と色彩のフラクタル次元も非常に似た値を示しています(言い換えれば、数値化によって微妙な差異も表現できる)。
フラクタル解析による日本とネパールの景観の比較
また、フラクタル的な考え方を取り入れると、何らかの分布において、その面積的な量だけでなく空間的な広がりをも捉えることができます。面積だけでは表現できない同一面積における分布形態の違い、つまり分布が固まっている場合と広がっている場合の違いを、フラクタル次元の大小で表現でき、定量的に分析することができます。形が複雑、あるいは分布がばらついているほど、フラクタル次元は高くなる傾向があります。
フラクタル解析の手法
(1):曲線を含むボックスは14個(みずいろの部分)ですが1辺の長さを半分にした場合29個になっているのでD≒1.0。
(2):曲線が全てのボックスを通過し、1辺を半分にすると曲線が通過しているボックスの数が4倍に増えるためD≒2.0。
ボックス・カウンティング法とはm曲線を1辺の長さLの正方形(3次元の場合は立方体)のボックスで覆い、曲線を含むボックスの個数N(L)を求めるというものです。ここで、1辺の長さを変化させたとき、以下の関係式が(良い近似で)成り立つ場合、Dをフラクタル次元と定義します。
-D
N(L) = C×L

景観の形のフラクタル次元を求めるために、ボックス・カウンティング法という方法を用います。

人の感覚は千差万別で、かつあいまいなものです。例えば、普段なにげなく”いい景色”と思っていることでも、では一体どこがどう特徴的なのか?と問われれば、ちょっと困ってしまいます。しかし、よりよい景観を創出するための計画では、なんらかの特徴を客観的に出さなければ、いつまでたっても結論が出ないことにもなりかねません。自然環境に配慮した形での施設などを建設する場合、その多くは、設計者や施工者などの自然観に基づく主観的な評価になりがちです。では、本当に、自然を客観的に評価することは出来ないのでしょうか?
これらの問題を解決するためのの方法として、当社では、景観の特徴を数値で置き換える(これを定量化といいます)フラクタルやファジイ理論、AHP等による解析を行っています。
○時系列的解析に基づく将来予測
左の図のフラクタル次元:1.81 (空間的に広がっている)
右の図のフラクタル次元:1.22 (空間的に偏っている)

(3):線分を3等分し真ん中の部分を正三角形の2辺で置き換える操作を繰り返すことによって生成される曲線で、D≒1.262。
フラクタル解析の応用の可能性
○設計にむけて
渓谷の風景(左:ネパール,右:日本)
棚田の風景(左:ネパール,右:日本)
景観を評価するということ -混沌のなかに秩序を見出す-
このほか、フラクタル解析は、防災や環境保全に関して様々な可能性を持っています。
当社では、今後ともケーススタディを重ね、より精度が高く、広く応用できるような研究を行っています。
自然に任せた河道形成の手助けとなるような手法の開発
⇒ 大きな構造だけをフラクタル的に設計する
⇒ 小構造は,自然に任せる
在来型工法の利用とフラクタルによる設計手法の開発
⇒ 例えば,牛枠などの設置位置と数
実際の景観写真をエッジ処理により、景観構成要素の輪郭を把握します。
樹木に見られるフラクタル
フラクタルとは -この~木なんの木気になる木?-
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(Cは定係数)