この度は,日本応用地質学会論文賞の栄誉を賜り,誠にありがとうございます。
賞を頂きました論文は風化花崗岩について地すべりの変位率と内部構造をまとめたもので,このような初生的な地すべりの発生メカニズムを研究することにより,いろいろな地域の防災計画に役立つと考えております。
この論文は,筆者らの新第三紀の堆積軟岩,結晶片岩分布地域の地すべりの地形発達に続く,重力斜面変形に伴う変位率研究の3作目に当たり,これにより斜面の初生の地形発達史における地質ごとの違いについて,より理解が深まったと考えております。初生地すべりの変位率が地質ごとの岩盤限界ひずみにほぼ対応すること,地すべりの地形発達は変位率と斜面の傾斜との関係で分類できることがより明確になりました。
変位率は地すべりの変位量と長さで算出するため,特殊な機材や道具は必要なく,地形・地質調査の基本である地形判読や蟻のように歩き回る地質踏査で求めることが出来ます。このようなシンプルな地質調査から,地すべりの地形発達を区分できる手法は大変有用と考えております。このような手法に,バランス断面などの理学的の手法や工学的な地盤リスクの観点を付加していくことで,今後の更なる発展が期待できます。
最後に、本論文は、第一著者の大学でも卒業論文のフィールドであり、在学中は日本大学の小坂先生や滑ツ境地質入社後は同社の地質技術者に現地調査のご協力や有益な意見交換を頂き、論文のアイディアや取りまとめなど、すべての面でおせわになりました。この場を借りて深く感謝の意を表し、お礼の言葉とさせていただきます。
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