環境地質学とは
地域社会と地質学の境界領域の橋渡し
人々の暮らし、歴史、文化だけなく、動物・植物はもちろん岩石や地盤など無生物にも、それそれの時間軸があり広がりがあり、位置関係による変化が起こります。環境地質学とは、こういった諸現象が人間社会へどのような影響を与えるか、様々な科学と連携し現場主義に立ち計画・研究・分析・解析・計画・評価を行うことを目的としています。
法律・社会・心理学そして自然
心理学・・・災害心理・正しく恐れる
地質学は大地の成り立ちを様々なものさしで客観的に分析する科学です。穏やかな水と緑に恵まれた土地は安全・安心、激しい風雨や地震を伴う不幸な災害過度に怖れず、かつ油断せず、心理学的なアプローチも行います。
経済学・・・危ない土地は借金と同じ
例えば土地の価値は、普通は駅から近い、形がきれい、広い道路があるなどで決まります。安全な土地は資産、危険な土地は借金と同じ、自然災害に対する社会や経済の脆さも分析して、リスク管理のあり方を研究しています。
法学・・・災害と法体系の変遷・イエロー・レッドゾーン
わが国では自然災害や環境汚染が問題になるたびに、各分野で法律が施行され、改正されてきました。社会情勢と共に複合化する自然災害にどのように対応するか、裁判事例も踏まえた検討事例チも豊富です。
社会学・・・規模と頻度に応じた防災計画、備え
住んでいる場所は同じでも、家族のありかた、社会的な立場、地域社会との関わりは様々です。そこに自然現象、土地の成り立ちによる影響も個々人で違った形で関わってきます。
歴史や文化の融合
文化学
人類の文化・文明や人々の生活が、地質とどのように関わってきたか、文学や音楽、温泉に景勝地、お酒に美味しい食べ物などなど、ジオメリットがたくさんです。比較文化論や文化人類学も密接にかかわります。
歴史学
最近豪雨や地震が増えているとは言え、科学技術による観測が行われる前から災害の記録や記憶は古文書や石碑、祭りなどに伝承されており、平安京に立地など大きな歴史の転換点にも地質は大きな関わりを持ちます。
人類学
人も自然の一部です。気候変動や環境の変遷に応じて、人類も様々な進化を遂げてきました。負の側面としては、社会環境や自然環境の破壊があります。現代の人類は、さらに環境へ影響を大きく与えうる存在です。
生態学
地盤情報と生物情報の有機的な評価手法として、応用地生態学に基づく地生態断面図や応用地生態マップを作成し、開発に伴う環境アセスメントや自然環境保全対策の調査方法として、より実用的かつ経済的な手法を提唱しています。
地球科学と安全安心
土木学・・・社会基盤整備
築土構木。快適で安心な暮らしも土木学が支えています。地球の歴史、人々の暮らしを総合的に理解し、縁の下の力持ちとして社会基盤を整備するのも環境地質学の使命です。
工学・・・防災対策・環境保全対策の基盤
要対策。その場所が分かったら設計・施工に映ります。しかし、そこでも地盤の成り立ちに基づいて、原位置での強度分布、安定解析を順算で行うことで、理にかなった対策工を作ることができるのです。
地質学・・・ひとつの露頭から地球を考える
露頭は地質の最良の情報源です。地域の地質層序やそれらの構造的関係、岩盤の物性など、いろんな情報が詰まっています。この点情報をルートに広げ、やがて3次元情報を持った地球史を解析します。
物理学・・・斜面挙動の予測・地下構造の探査
斜面や構造物の挙動の予測、また、長期的な地層の安定性の定量的な評価。また人工地震波、音波などにより、地盤構造や構造物の内部を広域に可視化(イメージング)することも重要です。
法律・社会・心理学そして自然
化学・・・物質の変化、循環を見える化する
鉱物の組成や年代測定だけでなく、循環する水質の分析のほか、災害廃棄物による土壌汚染・地下水汚染の調査、地層の長期的安定性、地質学と化学的分析の共同も社会の安全、環境の保全の鍵を握ります。
生物学・・・地質と地球の時計の針
化石の対比と層所によって地球環境の変遷を解析することは、SDGs(持続可能な社会の構築)への貢献に不可欠です。人口が急増し環境に大きく影響し始めたのは地球の歴史の一瞬ですが、過去には未来へのヒントが詰まっています。
地理学・・・地域を幅広く客観的に分析する
森林植生や街並み、地形や地質の状況など、環境を構成する要素のうち地図に描ける要素を何層も重ねてみる。その位置関係、成立過程の因果関係を解析することで、インフラや住まいの適地選定、安定度が分かります。
気象学・・・大気・水の動きや温度、振れ幅と
近年気候変動に伴い気象現象が大きく振れ動くことが多くなっているため、従来の基準で設計されたインフラの維持管理の方法が問われています。また、季節の移ろいも変化しており、暮らしや生態系へ影響が出ています。